海外FXでできる両建ての方法とは?注意点も解説
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両建ては海外FXでも可能であり、損益の固定化や節税のための有効な手段として認識されています。
ただし、海外FXには「ボーナス」や「ゼロカットシステム」という制度があることなどから、一部の両建てが禁止となっているケースがあります。特に、ボーナスを提供している業者では厳しく取り締まられている傾向にあり、発覚するとペナルティの対象になることもあります。
この記事では、海外FX業者でできる両建ての方法や注意点、主要な海外FX業者がどのような制限をかけているかを解説します。
FXの両建てとは?
両建てとは、同じ通貨ペアの買いポジションと売りポジションを同時に保有することです。禁止されている両建て方法もありますが、両建て自体は可能であり、さまざまな用途で活用されています。
なお、両建ては以下の3つの種類に分けることができます
- 同一口座内の両建て
- 口座間の両建て
- 異なる業者間の両建て
この中で、海外FXで問題なく行えるのは、同一口座内の両建てです。
一方で、口座間の両建てや業者間の両建てについては、禁止となっているケースも少なくありません。口座間の両建てや業者間の両建てでは、別々の口座で両建てをすることになります。別々の口座での両建ては、FX業者に一方的に不利益をもたらす可能性があるため、制限がかけられることがあります。
両建てのメリット
両建ての主なメリットは、一時的に損益を固定できる点です。
例えば、含み益が発生しているときに同じポジション量で両建てをすれば、含み益はその時点で固定できます。このように両建てをした後であれば、相場がどのように動いても含み益にはほとんど影響しません。相場が上がっても下がっても、片方のポジションの利益が増え、もう片方のポジションの損失が増えるだけであり、その増減は相殺されます。
例えば、相場が不安定になってきているときや、重要な経済指標が予定されている場合に活用できます。あらかじめ両建てをしていれば、決済せずとも損益を固定し、様子見することができます。損益がほとんど変動しないため、精神的に消耗することも少ないでしょう。
両建ての注意点
両建て取引で注意するべき点は、主に2つあります。
スワップポイントは原則マイナスになる
FX取引では、ポジションを翌日に持ち越すと、日ごとにスワップポイントが発生します。
スワップポイントとは、通貨ペアを構成している2通貨の金利差を反映したものです。金利が高いほうの通貨を買い、低いほうの通貨を売るポジションを持っていると、スワップポイントを受け取れるというイメージです。
両建てポジションを保有したまま営業日の終わり(ロールオーバー)を超えると、買いポジションと売りポジションの両方にスワップポイントが発生します。
スワップポイントの値は利用する海外FX業者によって異なっていますが、ほとんどの場合、プラススワップよりもマイナススワップの額が大きくなるように設定されています。実際に各業者が設定しているスワップポイントを見てみると、以下のような結果となります。
海外FX業者 | EURUSD | USDJPY | ||
ショート | ロング | ショート | ロング | |
A社 | 0.00 | -6.51 | -23.7 | 0.00 |
B社 | 2.66 | -7.21 | -27.6 | 18.8 |
C社 | 1.52 | -8.48 | -27.2 | 11.6 |
D社 | 0.00 | -9.69 | -28.5 | 0.00 |
業者 | EURUSD | USDJPY | ||
ショート | ロング | ショート | ロング | |
A社 | 0.00 | -6.51 | -23.7 | 0.00 |
B社 | 2.66 | -7.21 | -27.6 | 18.8 |
C社 | 1.52 | -8.48 | -27.2 | 11.6 |
D社 | 0.00 | -9.69 | -28.5 | 0.00 |
上記の表では、ショートとロングのスワップポイントを足すと、全てマイナスになります。つまり、両建てをしたままポジションを持ち越すと、合計のスワップポイントはマイナスとなり、その分を徴収されてしまいます。
各FX業者は、2ヶ国間の政策金利差をベースにスワップポイントを設定します。そのため、政策金利の変動によってスワップポイントが変更されることがあります。
エントリーや決済のタイミングが難しい
両建てを成功させる上では、タイミングが大切になります。
例えば、経済指標の発表直後はスプレッドが大きく開いてしまうため、このタイミングで両建てのためのエントリーをしても、両建てが機能しなくなる可能性があります。少額の証拠金で運用している場合、どちらのポジションも強制ロスカットになってしまう可能性もあります。
また、両建てをしている場合、相場の方向性が定まった段階で一方のポジションを決済する必要がありますが、このタイミングを慎重に見計らわないと、損失も大きくなってしまいます。
両建てを使いこなすことは簡単ではありません。両建てによって恩恵を得ようとした結果、損失を膨らませてしまう恐れもあります。両建ては、どちらかというと中上級者向けの取引手法と考えておくと良いでしょう。
海外FXでできる両建ての方法
海外FX業者でも可能な両建ての例として、以下の3つを紹介します。
利益を一時的に固定する両建て
両建てを利用して、利益を一時的に固定するという方法があります。例えば、ポジションの含み益を減らすことなく、重要な経済指標発表を通過したい場合に利用できるでしょう。
重要な経済指標の例として、米消費者物価指数や米雇用統計を挙げることができます。これらの発表直後は、相場の変動が大きくなる傾向があります。したがって、中長期でポジションを保有するトレーダーにとって、重要指標の発表があることはリスクだといえます。
利益を固定するための両建ては、上記のリスクを避けるために利用できます。重要経済指標の30分前ぐらいに両建てを行うことで、経済指標発表前後の変動の影響を受けないようにできるでしょう。
相関性の高い通貨ペアでの両建て
両建ては通常、同一銘柄で反対方向のポジションを持つことによって成立します。しかし、リスクヘッジを目的として、相関性の高い通貨ペア同士で両建てすることもあります。
例えば、カナダドル(CAD)と原油相場は密接に関係しています。原油価格の変動がカナダドルに大きく影響を与えるため、これらは高い相関性を持つ銘柄だといえます。また、オセアニア通貨である豪ドル(AUD)とニュージーランドドル(NZD)、欧州系通貨であるユーロ(EUR)とポンド(GBP)も相関性が高い組み合わせとして知られています。
これらの相関性の高い通貨ペアを利用して、片方の通貨ペアで買いポジションを、もう片方で売りポジションを取ることにより、リスクを分散させることが可能です。
ただし、両建て取引に対して厳しいブローカーでは、相関性の高い通貨ペア同士であっても、両建て関係となっていることが禁止される場合があります。このような取引を行う予定がある場合は、念のために利用規約の該当部分を細かくチェックしておきましょう。
節税のために行う両建て
両建ては節税のために使うこともできます。
海外FXの税金計算では、その年の1月1日〜12月31日の間に確定した損益が対象となります。そのため、年末時点でポジションを保有している状況では、12月31日までに決済をすれば、確定した損益はその年の収益に含まれます。一方で年内に決済しなければ、その損益は翌年以降に持ち越されます。
上記の原則を活用すると、税金の金額を調整できます。
例えば、含み益が出ているポジションを保有していたとします。また、その年はトレードの成績が好調で、すでに大きな利益が上がっていたとします。海外FXの所得にかかる税率には、利益を上げるほど高くなりやすいという性質があります。そのため、すでに大きな利益が出ている年の場合、年内にポジションを決済すれば、その決済した利益に対して、高い税率が適用される可能性が高まります。
一方で決済を遅らせれば、そのポジションが持つ利益は翌年に持ち越せます。翌年の成績次第ではありますが、持ち越すことにより、そのポジションによって得た利益には、より低い税率が適用される可能性があります。
上記のような点を考慮してポジションを持ち越すことにした場合、注意すべき点があります。それは、持ち越している間に相場が動き、含み益が減る恐れがあるという点です。このリスクをケアするために有効なのが両建てというわけです。
海外FXの両建ては制限が厳しい?主要海外FX業者の対応
海外FXにおける両建てに関する制限は、国内FXよりも厳しめです。
もちろん、正当な両建て取引を禁止するFX業者はありません。また、制限を設けていないブローカーもあります。しかし、何らかの制約があるケースは少なくありません。
規約違反になるかどうかは、業者側の裁量で決定される場合が多いです。トレーダーに違反のつもりがなくても、規約違反と見なされてしまうリスクがあります。不安がある場合は、利用規約をしっかり読み込み、サポートに問い合わせておきましょう。
主要海外FX業者の対応状況
両建てに対する制限は、その海外FX業者によって異なります。制限が厳しいブローカーもあれば、悪質でない限りは特に制限がないという業者もあります。
主要海外FX業者の対応は以下の通りです。
FX業者 | 口座間の両建て | 業者間の両建て |
A社 | 〇 | 〇 |
B社 | 〇 | 〇 |
C社 | 〇 | 〇 |
D社 | 〇 | 〇 |
E社 | △*1 | △*1 |
F社 | × | × |
G社 | × | × |
*1複数口座間や業者間の両建て取引は可能ですが、その取引はゼロカットシステムによる補填の対象外となります。
FX業者 | 口座間の両建て | 業者間の両建て |
A社 | 〇 | 〇 |
B社 | 〇 | 〇 |
C社 | 〇 | 〇 |
D社 | 〇 | 〇 |
E社 | △*1 | △*1 |
F社 | × | × |
G社 | × | × |
*1複数口座間や業者間の両建て取引は可能ですが、その取引はゼロカットシステムによる補填の対象外となります。
豪華なボーナスを提供するF社やG社では、両建てに対する制限が厳しめです。後述するように、ボーナスを悪用した両建てが業者にリスクを負わせる可能性があるためです。一方、大手海外FX業者のA社や、取引制限がないことで知られるB社では、複数口座の両建ても業者間の両建ても可能です。
ただし、どの業者であっても、ゼロカットシステムを悪用した取引は禁止となっています。両建て取引がゼロカットシステムの悪用と見なされた場合には、ペナルティが科せられる可能性があるため、注意が必要です。
ゼロカットシステムとは、取引口座の残高がマイナスになったときに、残高を0円にリセットしてもらえる仕組みのことです。海外FX業者がマイナス分を負担することで実現しています。
相場が何らかの要因で急変動すると、強制ロスカットが間に合わず、口座残高がマイナスになるケースもあります。ゼロカットシステムはこのような状況で発動します。
複数口座間の両建てが制限される理由
先述の通り、複数口座間での両建てが禁止されているケースがあります。この理由を紹介します。
前提として、海外FX業者は複数の口座タイプを提供しており、1人のトレーダーが複数の口座を開設できるようにしています。これには、口座タイプによってトレードスタイルを分けたり、資金を分散できたりといったメリットがあります。
ただし、複数口座での両建ては禁止されることがあります。この理由の1つとしては、ゼロカットシステムが口座ごとの適用になっている点を挙げることができます。
例として、A口座でドル円の買いポジション、B口座でドル円の売りポジションを保有した場合を考えます。両建てポジションを保有した後に、非常に大きな価格上昇が起こったとします。この場合、A口座では大きな利益が出ます。一方、B口座では大きな損失になります。
本来、A口座で生じた利益とB口座で生じた損失は、合計するとゼロに近い数値となり、利益は出ないことになります。しかし、大きな損失が出た結果、B口座の口座残高がマイナスとなっていたなら、話は変わってきます。B口座の残高がゼロカットによって0円にまでリセットされ、そのリセットされたマイナス分がトレーダーの利益になります。
上記のような取引はFX業者の不利益につながるため、利用規約で禁止されることがあります。
異なる業者間の両建てが制限される理由
異なる業者間の両建ても禁止されることがあります。複数口座の両建てと同じく、ゼロカットシステムなどを利用した不正行為ができてしまうためです。
例えば、業者Aで買いポジション、業者Bで売りポジションを保有し、価格が急騰した場合、業者Aでは大きく利益を伸ばし、業者Bではゼロカットシステムによって損失を限定できます。
なお、ここではゼロカットシステムを悪用した両建てについて説明しましたが、ボーナスを利用することでも、上記のように業者にリスクを負わせるような両建てができてしまいます。これは、無料でもらったボーナスによって損失を限定し、利益を残すという手法です。
このような両建てはボーナスアービトラージと呼ばれ、ほとんどの海外FX業者で禁止されています。ゼロカットシステムの悪用と同様に、ボーナスアービトラージをすることも避けて下さい。
EA(自動売買プログラム)を運用している人であれば、ブローカーごとに運用するEAを使い分けていることもあるでしょう。その状況では、意図せず両建てをしてしまうケースがあります。このような両建ても、ペナルティの対象になるケースもあります。
異なる海外FX業者間の両建てがばれる理由
異なる海外FX業者間の両建てを検知する方法は、一般には公開されていません。しかし、検知される理由には、以下のような点が関係していると考えられます。
多くの業者がMT4/MT5を利用している
多くの海外FX業者が取引プラットフォームとして、MetaTrader4(MT4)やMetaTrader5(MT5)を採用しています。これらのプラットフォームには、ブローカーが取引を監視し、不正行為を検出するための仕組みが組み込まれています。また、トレーダーの取引履歴を分析して不正行為を疑う機能も備わっています。
上記のような特徴から、別々の業者での両建てが検知される可能性があります。
同じ仲介業者(ブリッジ)を使っている
異なる業者間の両建ては、仲介金融機関である「ブリッジ」を介して判明するケースもあります。
ブリッジとは、ユーザーの注文をFX業者から金融機関へ受け渡す仲介業者です。このブリッジが共通である場合、両建てをしていることが発覚する可能性があります。
違反行為を発見する方法は、これら以外にも複数あると考えられます。抜け道を探すよりも、利用規約を遵守して、利益を増やすほうが賢明でしょう。業者間の両建てをする可能性があるなら、両建て取引に関する制限がないFX業者を選ぶようにして下さい。
両建ては許可された範囲で使おう
海外FXにおいても両建て取引は、損益固定や節税の手段として機能します。口座間・業者間での両建てには注意が必要ですが、同一口座内の両建てであれば問題なく行えるケースがほとんどで、この両建てならペナルティなどを心配する必要はないでしょう。
また、ゼロカットシステムなどの悪用にならない場合は、口座間・業者間の両建てを許可している業者もあります。そうした業者を選ぶのも1つの方法です。
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