海外FXには信託保全がない?破綻時に補償や分別管理について解説
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国内FX業者と異なり、多くの海外FX業者は信託保全を採用していません。破綻時などに預けた資金が十分に保全されない可能性があり、万が一の場合を想定し、利用をためらってしまう人も少なくないでしょう。
しかし、ゼロカットシステムの存在やレバレッジの高さ、NDD方式による透明性の高さは国内FXにはない魅力です。これらに魅力を感じる場合は、安全性の高い海外FX業者を選ぶ必要があります。
当記事では、海外FX業者が採用する資金管理方法やユーザーへの補償体制、さらに安心して海外FXを利用するポイントを紹介します。
海外FXには信託保全がないので危険?
国内FXと比べたときの海外FXのデメリットとして、以下のような点がよく挙げられます。
- 業者の多くは信託保全を採用していない
- 破綻時に資金が返ってこない恐れがある
どちらも正しい指摘といえます。資金管理方法という点においては、信託保全が義務付けられた国内FX業者のほうが安心でしょう。
しかし追証の有無という点では、海外FX業者のほうが安心感があります。また、健全な運営を続けて信頼を得ている海外FX業者も存在し、「信託保全がなければ危険」とは一概にはいえない部分もあります。
追証とは、証拠金の追加入金が必要な状況のことです。口座残高がマイナスになった場合に、国内FXでは追加入金が求められますが、海外FXでは基本的に業者がマイナス分を補填してくれるため、追加入金は不要です。
全ての海外FX業者が安全であるともいえませんが、安心感のある資金管理方法を取っている業者が大半です。さらに万が一の事態に備え、ユーザーへの補償体制を整えているブローカーも存在します。
大手海外FX業者の資金管理・補償の体制
どれくらいの海外FX業者が信託保全を採用しているのか、また信託保全以外ではどのような資金管理方法が採用されているのか確認してみましょう。なお調査日は、2023年8月3日です。
FX業者 | 管理方法 |
A社 | 分別管理 |
B社 | 分別管理 |
C社 | 分別管理 |
D社 | 信託保全*1 |
E社 | 分別管理 |
F社 | 分別管理 |
FX業者 | 管理方法 |
A社 | 分別管理 |
B社 | 分別管理 |
C社 | 分別管理 |
D社 | 信託保全*1 |
E社 | 分別管理 |
F社 | 分別管理 |
*1信託保全の対象となる金額に上限があるため、制限付きの信託保全です。
信託保全をしている海外FX業者は、上記の表の中では1社のみでした。その他の業者は分別管理という方法を取っています。
続いて、破綻時などに受けられる補償について見てみましょう。こちらも調査日は、2023年8月3日です。
FX業者 | 最大補償金額 |
A社 | 全額 |
B社 | 2万ユーロ(約310万円) |
C社 | 2万ユーロ(約310万円) |
D社 | 3.5万ドル(約500万円) |
E社 | 2万ユーロ(約310万円) |
F社 | 8.5万ポンド(約1,500万円) |
FX業者 | 最大補償金額 |
A社 | 全額 |
B社 | 2万ユーロ (約310万円) |
C社 | 2万ユーロ (約310万円) |
D社 | 3.5万ドル (約500万円) |
E社 | 2万ユーロ (約310万円) |
F社 | 8.5万ポンド (約1,500万円) |
大手海外FX業者の多くが一定の補償を行うと表明しています。
海外FX業者を選ぶ際は資金管理体制だけでなく、補償体制についても確認しておくとより安心でしょう。なお補償の条件は業者によって異なるため、条件部分についても確認しておいて下さい。
信託保全はなぜ安全?分別管理との違いは?
ここでは信託保全と分別管理の仕組みを解説します。それぞれの仕組みを知れば、なぜ信託保全がより安全といわれているかが分かります。
信託保全の仕組み
信託保全とは、顧客から預かった資金を第三者の金融機関の口座に預託し、完全に管理を委託する体制のことです。顧客の資金が第三者の管理下にあるため、万が一、FX業者が破綻した場合でも顧客の資金は保護されます。
ただし、信託保全が元本保証ではないという点には注意が必要です。
例として海外FX業者に100万円入金し、その後取引で70万円まで残高が減った状態であったとします。この時点で海外FX業者が破綻した場合、補償されるのは70万円までとなります。
信託保全では第三者機関に顧客の資金管理を完全に委託するため、委託費用や監査費用などのコストがかかります。義務化されていないこともあり、海外FX業者の多くは自社で管理することを選択しています。
分別管理の仕組み
分別管理とは、自社の運営費用と顧客から預かった資金を明確に区別して管理する体制のことです。
顧客資金が分離して管理されるという点は、分別管理も信託保全も同じです。しかし、誰が顧客資金を管理するのかという点で異なります。
分別管理が採用されている場合、顧客資金を管理するのは海外FX業者です。海外FX業者と第三者が共同で管理しているケースもありますが、完全に第三者機関が管理するわけではなく、この点で信託保全とは異なります。
第三者による管理ではないため、FX業者に破綻や債務超過の可能性が浮上した際に、顧客資金が流用される可能性がないとはいえないのです。ただし昨今では「完全分別管理」を掲げ、信託保全に近い状態であることを顧客に伝えるブローカーも出てきています。
同じ分別管理であっても、第三者が介在している場合とそうでない場合では安全性が異なります。分別管理の方法まで確認しておくとよりリスクを把握しやすくなります。
海外FX業者が加入する補償制度
トレーダーの資金を守る目的で、補償制度へ加入している海外FX業者もあります。分別管理がされていることに加え、補償制度によって一部の補償が約束されていれば、より安心して利用できるブローカーだといえるでしょう。
ここでは海外FX業者が加入することのある補償制度として、以下の4つを紹介します。
民事賠償責任保険
海外FX業者によっては民事賠償責任保険に加入しています。海外FX業者がユーザーに対して損害を与えた際に、保険会社から補償を受けられる可能性があるため、1つの安心材料となります。
補償対象となる条件や最大補償金額は一定ではありません。そのためブローカーごとに確認する必要があります。
Investor Compensation Fund
Investor Compensation Fund(ICF)は、投資家への補償を目的とした基金の1つです。利用している海外FX業者がICFに加入している場合、ブローカーが顧客資金を返済できないような事態などに補償を受けられる可能性があります。
最大補償金額は1回の申し立てあたり、2万ユーロ(約310万円)と累積補償対象金額の90%のどちらか低い金額です。全額補償ではないものの、信託保全をしている海外FX業者でも最大補償額を2万ユーロとしているケースもあります。それを考慮すると、比較的安心感のある補償内容といえるでしょう。
なお、キプロスの金融ライセンスを持っている海外FX業者は、必ずこのICFに加盟しています。
ICFに加入している海外FX業者を利用する場合は、2万ユーロ以上の金額にならないように利用すればより安心できるでしょう。
Compensation Fund
Compensation Fundとは、Financial Commissionという機関が提供している補償基金です。Financial Commissionはトレーダーとブローカー間のトラブル解消を目的として活動しており、その一環としてCompensation Fundを設けています。
このCompensation Fundによる補償は、利用しているブローカーがFinancial Commissionに加入している場合に受けることができ、その最大補償金額は1人あたり2万ユーロ(約310万円)となっています。
Financial Services Compensation Scheme
Financial Services Compensation Scheme(FSCS)は、金融サービスの利用者を保護するための補償制度です。利用しているブローカーがイギリスの金融監督機関「FCA(Financial Conduct Authority)」の認可を受けている場合、このFSCSの補償を受けられる可能性があります。
FSCSによる最大補償金額は、1人あたり8.5万ポンド(約1,500万円)です。補償金額の上限が高く、より安心感のある補償制度といえます。
海外FX業者の資金管理体制の確認方法
海外FX業者の資金管理方法や補償体制は、オフィシャルサイトの「当社について」や「安全性」といった項目に記載されています。例えば、以下のような文言で分別保管が伝えられることがあります。
お客様からお預かりした資金は、弊社の資金とは完全に区分して保管されております。
補償体制については以下のような文言で説明されることがあります。
当社はトレーダーとブローカーの間の紛争解決に取り組むFinancial Comissionに加盟しております。
情報が見あたらない場合は、ヘルプセンターやFAQなどもチェックしてみましょう。資金に関しての回答が掲載されている場合があります。
サイト上で明確でない場合は、メールやチャットからカスタマーサポートに問い合わせてみて下さい。手間はかかりますが、安心して取引するためには必要な工程です。
信頼性の高い海外FX業者の特徴
資金管理方法や補償体制のほか、信頼性の高い海外FX業者を見つけるポイントとして以下の点も確認しておきましょう。
悪評や勧誘が目立たないか
ブローカーに関する悪評が目立つ場合は注意する必要があります。特に出金遅延や出金拒否に関する指摘を確認してみて下さい。が複数のユーザーから投稿されているなら、様子見するほうが無難かもしれません。
禁止手法を用いたことが原因で出金拒否が起こっている可能性もあります。出金拒否との口コミの真相を確かめるためにも、自身が出金拒否に遭わないためにも、禁止手法を把握しておくことは重要です。
またインフルエンサーと思われる人物が「誰でも稼げる」「プロに預けるだけ」「1年で2倍は当たり前」など、誇張と思われるような表現で勧誘しているケースも要注意です。海外FXを謳った詐欺であり、預けた資金の出金ができなくなる可能性もあります。
金融ライセンスを保有しているか
金融ライセンスを保有しているかどうかは、信頼性を測る上での重要な基準です。
金融ライセンスを取得できるかどうかは資本力や運営能力、マネーロンダリング対策などの観点で決まります。そのため金融ライセンスを保有しているFX業者は、一定水準以上であると認められたことになるのです。
なお、金融ライセンスの発行機関には以下のようなものがあります。
- イギリス金融行動監視機構(FCA)
- キプロス証券取引委員会(CySEC)
- ニュージーランド金融市場統計局(FMA)
- オーストラリア証券投資委員会(ASIC)
- ケイマン諸島金融庁(CIMA)
- ベリーズ国際金融サービス委員会(IFSC)
- イギリス領バージン諸島金融サービス委員会(BVIFSC)
- セーシェル金融サービス庁(FSA)
- バヌアツ金融サービス委員会(VFSC)
ライセンスによって取得難易度は異なっています。また前述の通り、補償制度への加入が義務付けられているケースもあります。そのため、どの国の金融ライセンスを保有しているかまで確認しておくようにしましょう。
またグループ会社での取得を通じ、複数の金融ライセンスを保有している業者も存在します。グループ会社の保有状況も信頼性を測る際の参考となるでしょう。
ゼロカットシステムを採用しているか
急激な相場変動などでロスカットが間に合わず、口座残高がマイナスになってしまうことがあります。ゼロカットシステムを採用しているブローカーであれば、そのように生じたマイナス分を肩代わりしてくれるため安全です。
国内FX業者はゼロカットシステムを採用できません。顧客の損失を補填する行為は、金融商品取引法で禁止されているためです。
ゼロカットシステムが採用されていない場合、口座残高をゼロ以上に戻すために追加入金しなければいけません。場合によっては借金をする必要があるかもしれません。
このシステムを採用されていれば上記のような心配はなく、損失を出しても自分の資金内に収まります。このためゼロカットシステムを導入している海外FX業者を選ぶべきです。
海外FX業者を安心して利用する方法
より安心してトレードを行うために、ブローカー選びの後にできる工夫を紹介します。
複数の業者を利用する
多くの海外FXが採用しているのは分別管理であり、ユーザーの資金は信託保全ほど厳密に管理されるわけではありません。1人あたり2万ユーロといった補償上限が設定されていることも多いため、大きい資金を単独の海外FX業者に入れておくことには、ややリスクがあります。
補償される上限金額を確認しておき、複数の業者に資金を分散して利用するとより安心して取引できます。
こまめに出金する
資金の持ち逃げを防ぐ最も確実な方法は、海外FX業者の口座に資金を残しておかないことです。
ある程度はFX業者を信頼し、資金を入れておく必要があります。しかしトレードで勝ち、入金しておく必要がない資金ができた場合はこまめに出金しておくほうが安心です。
定期的に口コミをチェックする
ブローカー選びの際には問題がなくとも、利用している間にそのブローカーの評判が変わる可能性があります。そのため、定期的にブローカーの口コミを調べておくほうが良いでしょう。
ただしWeb上の情報の多くは匿名であり、正しいかどうか分からない情報もあります。その点を踏まえた上で、取捨選択するスキルは必要になります。
複数の観点からチェックしよう
海外FX業者の多くは信託保全を導入していません。しかし全ての業者が危険というわけでもありません。
採用している資金管理方法や補償制度、金融ライセンスの取得情報、口コミといった複数の情報を確認し、納得できる海外FX業者を探してみて下さい。
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貴重な意見をいただきありがとうございます。
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