海外FXのpipsとは?1pipあたりの損益計算の方法をシミュレーションを通して解説
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海外FXでは、価格を表す単位として「pips(pip)」が使われます。似た単位である「ポイント」や「銭」よりも頻繁に用いられ、「今月は100pips勝った」「ドル円が10pips動いた」といった使い方がされます。
このようにpipsは基本となる用語ですが、馴染みがない人も多いと考えられます。特に、1pip動いたときの損益といわれるとイメージしづらいという人は少なくないでしょう。
そこで当記事では、pipsの意味や1pipあたりの損益の計算方法について解説します。
FXのpipsとは
FXにおけるpips(pip)は「percentage in point」の頭文字を取ったもので、通貨ペアの値幅を表す共通単位として使われます。多くの為替通貨ペアでは小数点第4位、ドル円など円(JPY)絡みのペアでは小数点第2位の値が1動くと、1pip動いたことになります。
ユーロドルやドル円などのメジャーなFX銘柄であれば、1pipの大きさはどのFX業者でも基本的に同じです。しかし、新しく出てきた銘柄ではFX業者ごとに異なることもあります。
pipsは値幅を表す単位として使われていますが、なぜpipsが用いられるのでしょうか。価格の変動はpipsを使わなくても示せます。
例えば、ドル円が110.00円から110.05円に変動したことを表現したい場合、以下のようにさまざまな単位で表せます。
- ドル円が0.05円上昇した
- ドル円が5銭上昇した
- ドル円が5pips上昇した
複数の表現方法がある中でわざわざpipsを用いるのは、異なる通貨ペアであっても変動幅を比較しやすくするためです。
異なる通貨ペアの値幅をpipsを使わずに表現する場合、以下のように記載することになります。
- ドル円が0.1円変動した
- ユーロドルが0.001ドル変動した
- ユーロポンドが0.001ポンド変動した
pipsを使わない場合、変動幅を表す単位が通貨ペアごとに異なってしまいます。それぞれの通貨ペアの価値は異なるため、普段から対象の通貨を扱っている人でなければ変動幅を把握しづらいです。また小数点が多いことから、イメージしづらくなることもあるでしょう。
一方でpipsを使えば、どの通貨ペアであっても「10pips変動した」と表現できます。
初めのうちは円(JPY)やドル(USD)といった単位のほうが使いやすいと感じるかもしれません。しかし海外FXではpipsがよく使われるので、取引や勉強を続けていると徐々に慣れていき、抵抗感が薄れていくはずです。
pipsとポイントの違い
通貨ペアの値幅を表す単位として、pipsではなく「ポイント」が使われることもあります。
一般的にポイント(pointやpoints)とは、価格変動の最小単位のことです。例えば、ユーロドルのチャートを開いたときに、「1.12345」との価格表示がある場合、ポイントは小数点第5位を表すと考えられます。そして価格が「1.12346」に変動したとき、1point上昇したと表現できます。
海外FXにおいては、1pip = 10pointsとなることがほとんどです。0.1pipの「1」のようにpipsに換算したときの小数点第1位の値がポイントと考えると理解しやすいでしょう。
pipsと銭の違い
国内のFX業者では「銭」と呼ばれる単位が使われることがあります。銭とは、円の100分の1の大きさを表す単位であり、1銭 = 0.01円と表せます。
ドル円やユーロ円といったクロス円の通貨ペアの大きさを表すとき、銭もpipも0.01円を示します。どちらも同じ意味と感じるかもしれませんが、銭はユーロドルなどの円が絡まない通貨ペアにおける価格変動を表すことはできません。
クロス円とは、ドル円を除いた円絡みの通貨ペアを指します。
クロス円の価格変動であれば、1円未満の変動幅を表す際に銭を共通単位とすることができます。しかし海外FXでは、クロス円以外の通貨ペアも豊富であることもあり、pipsが使われていると考えられます。
1pipあたりの損益を計算する方法
先述の通り、海外FXではpipsが頻繁に使われます。狙う利益幅を考えるときも「10pips分狙おう」などとpipsが基準となるケースが多いです。このようなときに活用されるのが、1pipあたりの損益です。
1pipあたりの損益とは、1pipの値動きが生む損益のことです。pip値とも呼ばれます。例えば1pipあたりの損益が100円なら、相場が1pip動くと100円、10pips動くと1,000円の損益が生じると分かります。
10pipsの利益を狙うと決めても、1pipがいくらなのか分からなければ不便です。またFXではエントリー前に「損切りは20pipsの位置になる」などと想定をすることも多いですが、1pipの大きさが分からなければ20pips逆行したときの損失が何円か分かりません。
そのため、1pipあたりの損益は計算できるようになっておくべきでしょう。一般的には以下のような計算式となります。
以降では、円(JPY)が絡む通貨ペアと円が絡まない通貨ペアに分け、1pipあたりの損益の計算方法をより具体的に解説していきます。
なお、ツールを使って計算してしまうのも1つの方法です。その方法については後述します。
円が絡む通貨ペアにおける損益計算
ドル円やユーロ円のような円絡みの通貨ペアの場合、1pipの大きさが0.01円になるため、1pipあたりの損益の計算式を以下のようにより具体化できます。
あとは契約サイズとロット数さえ分かれば、1pipあたりの損益が計算できます。
契約サイズはFX業者や口座タイプによって異なりますが、海外FXでは10万通貨が基本となっています。そこで、ここでは契約サイズを10万通貨としてシミュレーションを進めます。
契約サイズとは1ロットあたりの取引通貨量のことで、コントラクトサイズやロットサイズとも呼ばれます。多くの海外FX業者では、為替銘柄の基本的な契約サイズが10万通貨となっています。
ロット数は発注時にトレーダーが自由に設定可能ですが、1ロットで注文したとします。すると契約サイズは10万通貨、ロット数は1ロットと必要な情報が揃い、1pipあたりの損益は以下のように1,000円と算出されます。
1pipあたりの損益が1,000円ですので、1万円の利益を出すには相場が10pips上昇したところで利確すれば良いと分かります。また損失を1万円以内に抑えたいなら、相場が10pips下がるまでに損切りをすれば良いと分かり、トレードしやすくなるでしょう。
円絡みの通貨ペアの損益について、ここで一度整理しておきましょう。1pipあたりの損益額は契約サイズとロット数によって変わります。また損益額は、値幅が10pipsならば10倍に、値幅が100pipsなら100倍となります。
ロット数 | 1pip | 10pips | 100pips |
0.01ロット | 10円 | 100円 | 1,000円 |
0.1ロット | 100円 | 1,000円 | 10,000円 |
1ロット | 1,000円 | 10,000円 | 100,000円 |
ロット数 | 1pip | 10pips | 100pips |
0.01ロット | 10円 | 100円 | 1,000円 |
0.1ロット | 100円 | 1,000円 | 10,000円 |
1ロット | 1,000円 | 10,000円 | 100,000円 |
*1契約サイズは10万通貨とします。
円が絡まない通貨ペアにおける損益計算
ユーロドルやポンドドルといった円が絡まない通貨ペアの場合、1pipの大きさが0.0001になるため、1pipあたりの損益の計算式は以下のようになります。
基本的な計算方法は円が絡む通貨ペアの場合と変わりません。ロット数によって損益額が変わる点や、値幅が10pipsとなった際に損益額も10倍になる点も同じです。
ロット数 | 1pip | 10pips | 100pips |
0.01ロット | 0.01ドル | 1ドル | 10ドル |
0.1ロット | 1ドル | 10ドル | 100ドル |
1ロット | 10ドル | 100ドル | 1,000ドル |
ロット数 | 1pip | 10pips | 100pips |
0.01ロット | 0.01ドル | 1ドル | 10ドル |
0.1ロット | 1ドル | 10ドル | 100ドル |
1ロット | 10ドル | 100ドル | 1,000ドル |
*1契約サイズが10万通貨であり、取引銘柄がドルストレートである場合の損益です。
しかし日本円が絡まない通貨ペアの場合、損益は日本円以外の通貨で表されます。例えば、ユーロドルやポンドドルのようなドルストレートを取引する場合、通貨ペアの後ろ側である「ドル(USD)」で損益が表されます。
損益額がドルなどで示されていても分かりづらいため、日本円に換算する作業が必要となるのです。したがって日本円が絡まない通貨ペアの1pipあたりの損益は、以下の式で計算することになります。
前述の通り、損益額は通貨ペアの後ろ側の銘柄で表され、ユーロドルの場合の損益額の単位はドルになります。そこで換算レートとして、ドル円(後ろ側の銘柄が日本円)をかけることになります。
ここまでの内容を踏まえ、以下の状況における1pipあたりの損益を計算してみましょう。
- 取引銘柄:ユーロドル
- 契約サイズ:10万通貨
- 注文ロット数:1ロット
- ドル円のレート:150円
この場合の計算式は以下の通りです。
1ロットあたりの損益は、1,500円ということになります。
海外FXにおける損益計算のシミュレーション
海外FXにおける損益計算のイメージを深めるため、以下の3つのケースについても考えてみましょう。
ドル円で100pipsの利益を得た場合
1ドル(USD)150.00円のタイミングでドル円をロング(買い)して、151.00円で決済したとします。このときの利益は100pipsです。
この100pipsがいくらかを考えるために、まず1pipあたりの損益を計算してみましょう。契約サイズが10万通貨、ロット数が1ロットとするとき、計算式は以下のようになります。
1pipあたり1,000円である取引において、100pipsの利益が出たということですので、利益は10万円です。
ユーロ円で10pipsの利益を得た場合
1ユーロ160.00円のタイミングでユーロ円をショートして、159.00円で決済したとします。このときの100pipの利益を日本円で表したいとき、どのように計算すると良いでしょうか。
ここでも契約サイズが10万通貨、ロット数が1ロットと仮定し、1pipあたりの損益から計算してみましょう。
ここでも1pipあたり1,000円であると分かります。利幅は100pipsでしたので、獲得した利益は10万円となります。
ユーロドルで利益を得た場合
最後にユーロドルで100pipsの利益を得た場合の計算方法について考えてみましょう。ユーロドルのように円絡みではない通貨ペアの場合、pipサイズが0.0001となる点とレート換算が必要な点に注意する必要があります。
1ユーロが1.1000ドルのタイミングでユーロドルをロングして、1.1100ドルで決済したとします。まず、利益は何pipsと表せるでしょうか。
円が絡まない通貨ペアの場合、小数点第4位が1pipのサイズである点に注意して下さい。
今回のケースでは、1.1000ドルと1.1100ドルの差を求めることになるため、値幅は100pipsとなります。
続いて、100pipsがいくらかを求めるに先立って1pipあたりの損益を計算してみましょう。ここでも契約サイズが10万通貨、ロット数が1ロットと仮定します。
1pipあたりの損益は10ドルですので、100pipsの値幅は1,000ドルであると分かります。
ここで注意したいのが、利益が円(JPY)ではなくドルで表されている点です。日本円で表すにはドル円をかける必要がありました。そこでドル円のレートを確認したところ150円だったとしたら、1pipあたりの損益は以下のようにも表せます。
1pipあたりの損益は1,500円ですので、100pipsの値幅は15万円であると分かります。もちろん、100pipsの値幅が1,000ドルであると分かった後に、「1,000ドル × 150円 = 15万円」と計算しても問題ありません。
ユーロポンドの場合はポンド円のレート、ドルスイスの場合はスイスフラン円のレートを見る必要があります。このように末尾の通貨ペアによって日本円に換算する際に使う通貨ペアの為替レートが変わります。
1pipあたりの損益の計算はツールでも可能
FXの取引時や取引前に毎回獲得pipsを計算するのは簡単ではありません。計算式中に小数点が複数含まれることも多いため、計算ミスをしてしまうかもしれません。
pipの計算に苦手意識がある人や計算ミスが心配な人は、インターネット上にある計算ツールを使うほうが良いかもしれません。
以下のような項目を入力して「計算する」ボタンを押せば、1pipあたりの損益を計算できるため、手間がかかりません。
- 口座通貨
- 通貨ペア
- 売買方向
- 取引数量
無料で使えるツールも複数出ています。計算に抵抗がある場合は、ツールを利用することを検討してみて下さい。
pipsを使えばスプレッドの計算もしやすくなる
pipsの使い方を覚えれば、スプレッドによる損失がいくらになるかも計算しやすくなります。スプレッドはpipsで表されることが多いためです。
スプレッドとは為替レートの売値(売る場合のレート)と買値(買う場合のレート)の差額のことです。FXではスプレッドが手数料となります。
この場合、1pipあたりの損益がそのままスプレッドによるコストとなります。
他方、ユーロドルのように円絡みでない通貨の場合は、小数点第4位が1pipのサイズです。もし売値が1.00010、買値が1.00025という状況なら、スプレッドは1.5pipsとなります。
この場合、1pipあたりの損益に1.5をかければスプレッドによるコストが分かります。
このように、小数点のどの位置が1pipのサイズであり、1pipあたりの損益がいくらかが分かれば、スプレッドの計算も簡単にできます。
なお、スプレッドは毎回自分で計算する必要はありません。自動で表示してくれるツールも存在しており、MT4/MT5であれば「気配値表示」というパネルから確認できます。
損切りの目安にpipsを使わないように注意
海外FXでは、pipsを活用すると取引がしやすくなるシーンが数多くあります。しかし損切りの目安を「毎回10pips」といったように決めることはおすすめできません。
例として、以下のドル円チャートでのトレードを考えてみましょう。直近高値を超えた145.97円で買いエントリーをしたとします。
「毎回10pips」というルールに従って損切り注文を出すなら、145.87円に逆指値で売り注文を入れることになります。
一見問題ないように感じられるかもしれませんが、損切りの位置を機械的に決めるとチャート上の値動きを無視することになります。すなわち、特に重要ではない水準に損切りを置いてしまい、損切りに遭った後に上昇していったという状況が増えるかもしれません。
また、テクニカル分析上は根拠のない取引となるため、この手法を繰り返したときの勝率や損益幅が測りづらくなると考えられます。損切りは押し安値に置くなど、相場の状況を加味したルールにするほうが良いでしょう。
損切り位置の決め方は人それぞれですが、メジャーな決め方に押し安値を基準にする方法があります。
例えば上記チャートでのトレードにおいては、直近の安値145.74円が押し安値です。そこを割ると上昇シナリオが崩れると考え、その少し下に損切り注文を入れることになります。
また、pipsだけで損切りを決めた場合、許容できる損失額を超えてしまう恐れも出てきます。例として、ドル円を以下の条件で取引するケースを考えてみましょう。
- 証拠金:3万円
- ロット数:1ロット(10万通貨)
- 損切り位置:常に20pips
以下のチャートの直近高値を超えた146.29円で、買いでエントリーをしたと仮定します。
エントリー後、価格は前回高値の近くまで上昇しましたが、その後は下落しました。利確していなかった場合、エントリーした価格から20pips下落した146.09円で損切りされ、2万円の損失が確定します。
たった1回の取引で3万円あった証拠金が1万円まで減少したことになります。このような結果となった理由は、損切りの目安をpipsのみで決めていたからです。損切りを決める場合は、許容できる損失額で決める必要があります。
例えば、1回の取引で証拠金の10%まで失っても良い場合は、3,000円が許容できる損失額となります。取引の結果、損切りになっても損失額が3,000円を超えないように、ロットやエントリータイミングを調整する必要があるのです。
pipsの扱いに慣れよう
海外FXで取引をしていくためには、pipsの扱いに慣れる必要があります。特に1pipあたりの損益はさまざまな活用方法があるため、ぜひ把握しておきましょう。
自分で計算するのが苦手な人は、インターネット上にあるツールやアプリでも損益の計算ができるので、活用してみて下さい。
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